毎日を安心して暮らす秘訣があります。
「その日生じた小さな心配事(モヤモヤ)を、その日のうちに解消してしまうこと」です。
そうすれば、憂鬱な気持ちのまま朝を迎えたり、「行きたくないな…」等の気持ちを抱えたまま出勤したりすることがなくなります。毎日が晴れの日のようになります。
この「その日のうちに解消する」習慣を、カラダの疲れについては多くの人が持っています。一日の終わりにお風呂に入るのが、その一つですね。
カラダの疲れと同じように、心に生じたモヤモヤもその日のうちに解消できれば、心や頭の一部を「悩むこと」に割かずに済み、ベストコンディションで最高のパフォーマンスを発揮することができるでしょう。
家族に聴いてもらうのは難しい
「その日のモヤモヤをその日のうちに解消する」にはどうしたらよいのでしょうか。
一人でもやれることと、他者の力を借りる方法とがあります。
一人でもやれることの代表例は「書くこと」ですが、これについては以前の記事で紹介しましたので、今日は後者についてとりあげようと思います。
他者の力を借りる方法の代表例は「聴いてもらう」ことです。
「相談すること」と言ってもいいかもしれません。
この方法が最強なのには、いくつか理由があります。
聴いてもらいながら言葉にすることで、モヤモヤの正体がはっきりします。
聴いてくれる人がいるということ自体が勇気や癒やしをくれる、ということもあるでしょう。
さらに、自分一人では思いもしなかった視点から助言をもらえるのも、他者に相談することの醍醐味の一つです。
ただし、ここにはひとつ課題があります。
「聴いてもらう相手」は誰でもよいわけではないのです。
私たちが「聴いてもらう(べき)相手」として真っ先に思い浮かべるのは、家族ではないでしょうか。
パートナーには何でも話せるような関係でいたい。
親には気持ちのすべてを受け止めてほしい。
それが当たり前だろう。だって家族なんだから。
そんなことを無意識に思いながら、私たちは家族に対して「ねえ、聴いてよ」と口を開きます。
ところが、家族メンバーが互いにそのような「聴き役」をやるのはとても難しいものです。
というのは、当の家族にもまた「その日生じたモヤモヤ」があるからです。
ご家族もまた、あなたに対して「私の話、聴いてよ」と思っているのです。
まるで”ニワトリとタマゴ”です。
相談のプロと身内のような関係に
このような事態を解決する一つの方法は、「その日のモヤモヤをその日のうちに相談できる相手を、家族以外に確保すること」です。
これ、実は多くの人が無意識にやっていることです。仕事帰りに占いやバー、スナックに立ち寄って、心配事を吐露して帰る人は結構います。
私は「行きつけの店」はとてもよい”相談支援センター”だと思います。なぜなら、モヤモヤが生じたその日に立ち寄れるからです。
逆に言うと、相談支援センターが「行きつけの店」になったらいいのにな、と思います。
もっと言えば、相談員が家族のような関係であればいいのにな、と。
「プロが身内にいる」という最強の安心感を体験したことのある方、多いのではないでしょうか。
「家を建てようと考えたけど何から手をつけていいか分からないとき、叔父さんが大工さんだだった」とか。
「謎の体調不良に襲われたとき、イトコがお医者さんだった」とか。
「プロが身内」だと、分からないことについてすぐに尋ねることができますよね。
ところで、「モヤモヤ」というのは「まだ自分が何について悩んでいるのか分かっていない状態」のことです。
お家の建て方なら、大工さんや宅建業者さんがプロです。病気ならお医者さん。
では「モヤモヤ」の相談のプロは誰なのでしょうか。
私は、それが「ソーシャルワーカー(相談員)」だと思います。
「その日のモヤモヤをその日のうちに解消する」には、ソーシャルワーカーを”家族メンバー”に加えればいいのです。
つまり、相談員と「いつでも相談できる関係になっておくこと」が、毎日を安心して暮らす秘訣なのです。
いつでも相談できる関係になるには
相談員(ソーシャルワーカー)は市町村の「相談支援センター」の公的機関や、福祉施設などに所属していることが多いです。
そのため、相談できるのは開所時間(平日の昼間)だけです。「いつでも」「モヤモヤが生じたその日のうちに」相談できるということは、なかなかありません。
また、そこでは「相談していい人(利用者)の条件」や「相談内容」も(事実上)決まっていることが多いです(制度の縦割りの問題)。
そのため、「その日のモヤモヤ」を、翌日や翌月、翌年まで持ち越してしまうことがあります。
その頃になると事態は「モヤモヤ」のレベルを超え、ふくらんで複雑化して、解消するにも多くの時間がかかってしまうことがあります。精神的な病気になってしまっていることもあるかもしれません。
では、どうすれば、相談のプロと「その日のうちに相談できる関係」になれるのでしょうか。
実は、私たちはそのことを考えて〈相談室おうち〉を作りました。
公的な機関や特定の制度に縛られた施設ではやりづらかった、「メール等でのフォローアップ」や「オンラインでの個別セッション」を、相談室おうちでは提供しています(決まった営業時間を設けていないのもそのためです)。
私の経験では、「その日生じたモヤモヤ」は数通のメールのやりとりや60分ていどのセッションで、たいてい解消することができます。
日々のモヤモヤというのは案外ちょっとしたことから生じているだけであり、その日のうちに向き合えば、ちょっとした対処で済むからです。
(もちろん、お困りごとが大きく複雑になってしまっている場合は、さらにやり取りを重ねたり、オープンダイアローグをしたりすることができます。)
最後ちょっと宣伝みたいになって照れくさいのですが、「相談員を家族メンバーに加えること」、言い換えると「家族的な支援」は、私にとって長年のテーマでもありました。
ちょっと話が飛びますが、精神科に長期入院していた方の退院後の生活を支える秘訣もまた「家族的な支援」なのです。
(関連記事:「家族」とは誰のことか)
ソーシャルワーカーに相談することは、現状まだまだ「事態が複雑化してから、一大決心して相談センターに行く」ようなことなのかもしれません。
それが「ちょっと息子夫婦にLINEする」みたいな感覚の、もっともっとカジュアルな生活習慣になることを、私は願っています。
関連記事を読む:相談員自身がオープンダイアローグ利用した話
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前の記事を読む:「ごめんなさい」と「ありがとう」の関係について
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