この記事ではオープンダイアローグをご利用になる際の全体的な流れについて、より詳しくご説明しています。
なお、この記事でご紹介するのは〈相談室けいこふゆひこ〉におけるオープンダイアローグの一例であり、「オープンダイアローグとは、どこに行ってもこういうものだ」ということをお伝えするものではありません。
(※〈相談室けいこふゆひこ〉は2022年「ダイアロジカル生活ラボ」から改名しました。)
初めてお問合せいただいたとき
オープンダイアローグの良さは、ご利用になる前、つまり初めてのお問合せやご利用相談(無料)をいただいた瞬間から体験していただくことができます。
それは、その瞬間から、スタッフの心のなかではあなたとの対話が始まっているからです。
お問合せフォームや電話・メールなど、いずれの方法でご連絡いただいた場合でも、あなたは、お困りのことを、あなたなりの表現でお伝えいただくことができます。
それがまだじゅうぶん言葉にならなくて、まとまっていなかったり、感情的であったりしても、何も問題はありません。
あなたの「そのときの言葉」をまるごと聴かせていただくところから関係を始めたいと、スタッフは思っています。
この場面では、私たちからも、いくつかのお尋ねをせていただくことが多いです。
「眠れていますか。」
「ダイアローグに参加してほしい方は、どなたですか。」
「いつどこでお話しするのが安心ですか。」
そのようなことを、あなたのペースで教えていただけるよう、お願いしています。
こうしたやりとりを丁寧に重ねる中で、対話ミーティングのメンバーや日時が固まっていきます。
ここまでのやりとりは、無料で行うことができます。
オープンダイアローグの初回
日時やメンバー・場所などが決まったら、いよいよ初回のオープンダイアローグ(対話ミーティング)を開きます。
もちろん、ご相談者様お一人と、私たちスタッフ2名とでお話することも可能です。
同様に、あなたにとって大切な方たち、つまり関係を作り直したいお相手や、力になってくれる方々と一堂に会し、それぞれの素直な気持ちや考えを互いに聴き合うこともあります。
以下、オープンダイアローグ(対話ミーティング)の特徴と、流れをご説明します。
◆特徴
オープンダイアローグは、従来の「話し合い」や「カウンセリング」の仕方とは大きく異なります。そのため、最初はちょっと戸惑われることがあるかもしれません。
重要なことは、オープンダイアローグは、議論をしたり何が悪かったかを分析したりする場ではない、ということです。
特定の誰かが悪者になったり批判されたりすることはありません。原因探しもしません。
何か決めなければならないことがあるときも、オープンダイアローグでは、「話す」場面と「決める」場面とを分けることを大切にしています。
なぜなら、「この場で何かが決まってしまう」と思うと、心配になって身構えたり、先々の展開を予想したりして、本当の気持ちを話しづらくなってしまうことがあるからです。
また、そこに何かの専門家が参加していたとしても、全員が「ひとりの人」としての気持ちや考えを述べます。
つまり、オープンダイアローグは「これが正しい」「こうすべきだ」といった "正解" や "真理" を伝える場ではないのです。むしろ、全員が「その人の視点からしか分からない事情を、いちばん知っている人」として、敬意をもって話を聴かれます。
全員が「対等」で「安全」な場であるからこそ語られること中に、あなたが「問題」と感じていた状況を解消する力を持った、新たな材料が、初めて見つかるのです。
【対話ミーティングの流れ①】歓迎される
オープンダイアローグ(対話ミーティング)は歓迎から始まります。
オープンダイアローグの場では、みなさんは「患者」でもなければ「問題のある人」でもありません。ひとりの人として、また、あなたからしか見えない視点をもたらしてくださる方として歓迎されるのです。
私たちスタッフは、参加される方々の新たな関係性が始まりを迎えるダイアローグにご一緒できることを光栄に感じながら、みなさんにご挨拶することでしょう。
【対話ミーティングの流れ②】呼び名を確認する
歓迎が終わったら、互いに何と呼び合うかを確認します。
本場フィンランドでは、たいてい下の名前で呼び合うようです。逆に、「〇〇先生」「お父さん」といった肩書や立場で呼ぶことは少ないようです。これは、対等性を大切にするオープンダイアローグの場に「力関係」を持ち込むことを避けるためでもあります。
ただし、日本とフィンランドとでは文化の違いがあるため、〈ダイアロジカル生活ラボ〉では参加者お一人おひとりの気持ちを確認することを大切にしています。
【対話ミーティングの流れ③】最初の質問:「この時間をどんな風に使いたいですか/どんなことを話す場だと聞いて来ましたか」
オープンダイアローグ(対話ミーティング)の本編は、この質問で始まることがほとんどです。お一人おひとりに、順番にうかがっていきます。そうすることで、他の参加者がいまどのような気持ちや認識でいるのか、あらかじめ知っておくことができます。
ここで語られたことから、その後の話は進められていきます。
★「聴く」と「話す」を分ける
オープンダイアローグの場では、誰かが話している間は、その人がしっかり話し終えるまで聴き続けることにご協力をお願いしています。
そのことで、お気持ちを言葉にすることに専念いただけます。また、「聴いてもらえた!」という感覚を互いに持つこともできるでしょう。
その間、聴いている側の参加者の内側には、いろいろな考えや想いが去来することと思います。
そうした、ご自身の「内なる声」にもまた、耳を傾けてあげてほしいと思います。
そうしているうち、話す順番は全員に回ってきます。
【対話ミーティングの流れ④】リフレクティング(スタッフによる "公開意見交換" )
途中、スタッフが意見交換を行うことがあります(「リフレクティング」と呼ばれます)。
「リフレクティング」は皆さんの目の前で行われます。
これまで、専門家と呼ばれる人たちはご相談者さんのいないところで分析や方針検討をすることが多く、そのことが "すれ違い" を生む原因となっていました。オープンダイアローグでは、このプロセスをご参加の皆さんにオープンにします。
その際、2名のスタッフは互いに向き合って話します。ご参加の皆さんからあえて視線を外すことで、よけいな圧力を与えないようにするためです。
つい絶対視しがちな "専門家" の意見。「リフレクティング」では、これを安全かつ客観的に眺めることができます。あなたにとって役に立つ意見は採用し、いらない意見はスルーすることもできるのです。
「リフレクティング」は、スタッフが「もっと対話を進めてみたい」「もっと聴いてみたい」と感じたトピックを開示し共有することにも使われます。
数分の「リフレクティング」をきっかけに、ダイアローグはさらに深まっていきます。
【対話ミーティングの流れ⑤】次回についての考えを聴く
オープンダイアローグは一度では終わらないことがあります。可能なら、必要な回数を連続して、熱の冷めないうちに行うのがよいとも言われています。
とはいえ、日本では現実的に難しいのも事実。次回の日程をその場で決めるもよし、いちどそれぞれの時間を過ごしてみて、お気持ちの変化を感じてみるのもよいでしょう。
【対話ミーティングの流れ⑥】最後に言葉にしておきたいことの確認
最後の最後に、今日この場で言いそびれたことや、言葉にだけでもしておきたいことが残っていないかの確認をして、その日の対話は終わります。
【対話ミーティングのあと①】"あいだの時期"を過ごす
初回の対話ミーティングが終わった後の過ごし方も、とても重要です。
次回が決まっている場合もあれば、そうでない場合もあります。対話ミーティングの中で決まったことを実行に移す場合もあります。
いずれにせよ、まずしていただきたいことは、初回のダイアローグの直後から、ご自身の内側に起きた変化に気づき、味わうことです。
オープンダイアローグの場で、あなたは、あなたにとって大切な人たちの声をたくさん聴きました。その声は、少し時間が経ってから、あなたの中に新たな気持ちや考えを湧き起こさせることがあります。
「あのときの、あの言葉は、こういう意味だったのかな。」
「あの人のあの話を思い出すと、いまこんな気持ちが湧いてきた。」
そのようなことを、じっくりと感じる時間を取ることには、大きな意味があります。
オプションメニュー「メール・SNS等でのフォローアップ」を使うことで、そのプロセスにスタッフが寄り添うことも可能です。
【対話ミーティングのあと②】ふたたびダイアローグする
初回での合意にもとづいたり、必要に応じそのつど連絡を取り合ったりして、オープンダイアローグ(対話ミーティング)を繰り返します。
そんな時間と空間を共有し続ける過程で、互いの気持ちについての理解が深まります。自然と「わだかまり」が解消したり、やるべきことが見えてきたりします。
「オープンダイアローグできる関係」になりさえすれば、たいていのことは "大丈夫" になる。
長くなりましたが、ここまで読んでいただいてありがとうございます。
オープンダイアローグを重ねることで得られる、いちばん大きな財産は、「話せる関係」ができることです。
対話ミーティングを終えた後も、生活を続けていけば意見の合わないことは出てくるでしょう。すれ違いが完全になくなることもないかもしれません。親子や夫婦、患者と医師は、互いに異なる人間ですから、当然といえば当然です。
でも、「何かあれば、オープンダイアローグすればいい」。
その場があるし、そうして乗り越えた経験がある。そのような「大丈夫感」や互いへの信頼感を得られることがオープンダイアローグの醍醐味だと、私は思っています。
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